【ウェブ型スクール】消えゆく原因は、講師への冷遇

投稿者: | 2022年8月29日

時をさかのぼる事、2011年ごろにCyta.jp(以下、サイタ)というコーチングサービスが全盛期を迎えていました。

サイタのサービスは「家の近くでレッスンが受けられる!」というもので、当時としては割りと画期的。
当然のようにサービス開始1年間で1万人以上のユーザーを獲得しました。

かくいう筆者も2013年頃にサイタにコーチ登録しており、ギターや作曲講座を提供しておりました。
コーチ経験者からみたサイタの強みは

①家の近くでレッスン可能
②予約・キャンセルがスマホで可能
③たくさんのレッスンが用意されている

これらの強みは今現在からみても「すごい良かったよなぁ」と思います。
しかしそんなサイタも2021年をもってコーチングサービスを完全終了させました。

理由は本当にコロナ…?

2020年以後に終了したあらゆる事業が「コロナの影響」によるものだと公表しています。
たしかにサイタのサービスはあくまでマッチング&対面のレッスン提供で、しかも楽器であれば多くの場合は閉鎖的なスタジオ、または狭いカラオケボックスでのレッスンでした。(サイタもカラオケ等を推奨していた)
”三密を避ける!”がスローガン化した日本では、世間の流れに合わなかったのかもしれません。

が、「原因はコロナ」はエンド部分だけを見たのであって、はじまりに別のキッカケがあったと思っています。
では、そのキッカケは何でしょうか。

講師待遇<集客、の結果

これはサイタに限らないことですが、音楽の講師待遇はけっして良いものではありません。

「1時間2000円~ですよ!」と広告で謡いながら、「レッスンは40分なので、1コマにすると¥1,340~でっせ…」という数字のマジックを使っているとこもあるし、根本的に報酬が激安の教室もおおいです。

サイタのような固定店舗を持たないウェブ完結型の音楽教室は、家賃も設備費もかからないから利回りが良く、結果として報酬も良さそうですよね。
でも実際はシステム運営費やエンジニアへの支払いが高額で、運営資金は店舗型と比べても安くはなりません

結果的に「講師は吐いて捨てるほどいる」という感じの理由で、安い報酬しか支払えなくなります。

前述のように、サイタでは年間数万人といったペースでユーザーを獲得しました。(最盛期には6万人にも届いていたとか)
『安い給料でも集客が凄ければ、そのうち巨額に増える!!』と思って長く続けたコーチもいました。
しかし、経験談としては”毎月10人増えて、毎月5人減る”くらいのリズムが繰り返されていて、なかなか難しかったです。

私の能力が低いだけかな?とも思いましたが、事実サイタはサービス終了してしまった。
これは全てのレッスンジャンルにおいて会員増加数が頭打ちになり、運営コストとのアンバランスに陥っていったということです。

『割高で、予約も面倒』

虎の子のシステムは改善されず、2014年時点でこんな声もたくさん聞こえ、コーチ側では何もお役に立てずそのままご退会…。
集客性は高いけれども、定着性が低い、そんな教室は今でもたくさんありますよね。
しかし理由は本当に『費用、面倒くささ』なのでしょうか?

たぶんそれは、生徒さんの思いが分かっていないからです。

生徒さんが求めるもの

たった2つなので、並べてみます。

①楽しいこと
②非日常性があること

これらだけ、もしくはどちらかだけです。

音楽を、通う事を、講師とのやりとりを、練習を、目標をもつことを楽しみたい。
音楽を通じて、レッスンへ行く事で、講師に出会う事で、練習を積む事で、目標をクリアすることで、今までの日常になかった何かを手にしたい。

こう思っています。
ですから、楽しみを阻害する何か、非日常性を崩す何かがあると、ユーザーは離れます。

わたしは若い頃、多くの講師仲間が所属教室の悪口を言っているのを聞いてきました。
こういう言論は必ず生徒さんに伝わりますが、何かずっと文句をいっている人から音楽を教わるなんて楽しみのカケラも無い、、講師は結果的に自分の首をしめてしまうのです。

講師待遇を見直さないと未来はない

講師を腐らせてしまうには原因があります。

①誰でも採用しすぎ
②待遇悪すぎ

当時でサイタの講師面接は『採用率10%以下!』と書かれていましたが、実際は(一部のぞいて)ほとんど全員受かっていたようです。
そりゃあ講師が多ければ生徒さんの獲得確率は上がりますから、一時的な収入に主眼をおけば講師が多いに越したことはありません。
でもやっぱり中には講師適正の低い人も混じっていて、生徒さんが被害を被っています。

『前の先生は、やたら自宅に来いっていうので怖くて…』と話す若い女性の方もいました。
講師の立場を利用したこんな事例は最悪だと思います。

そして中には講師としての天才に恵まれた人もいますが、こういった人は才覚が冴えていて、ショボい待遇の教室からは早々に去っていきがちです。

ソアー音楽教室の目指すもの

事態を改善するには、採用率を極限まで低くし、講師待遇を極限まで上げる必要があると思います。
これがレッスンクオリティを最大化していく唯一の方法で、頑張った講師はしっかり稼げます。(当然に教室は、驚くほど儲からない…泣)

『生徒さんへ最高のレッスン提供してください』

これは当教室が講師に出すたった一つの要望です。
方法はお任せ、費用がかかるなら運営が出す、講師との定期的なヒアリングを欠かさない。

素晴らしい才能に恵まれた当教室の講師が、最高のレッスンを実現するために我々は努力を惜しまない。
暑苦しいようですが、私の管理者としての理念はこれにつき、これ以外ありません。

ライブイベントも、設備も、報酬体系も、すべて講師発案で改善し、今の形を作っています。
規模は小さくても、最高のレッスンを、最高の講師陣と一緒にこれからも提供していきたい。

サイタ所属のむかしを回顧し、ますますそんな風に思います。

※Cyta.jp社の事業はクラウドワークスが買い取っており、同社の前向きな経営判断によってサービス終了したものであると推測されます。
本記事の内容はあくまで個人の体験談を綴ったものとご理解ください。

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