【触れれば炎上】ギターの音と木材は無関係だ!

投稿者: | 2022年4月19日

最近ギタリスト界隈をある話題が賑わせました。
いわく『ギターの音に木材が関係ないことが判明した』という趣旨の動画が発表されたのです。

この手の話題に初めて触れた人からすれば大変な驚きだったようで、Twitterを中心にネットでは燃えに燃えていました。。
元になったツイートがこちらです。

リプを見ると色々なご意見がありますが、だいたいが「驚き!」「そんなわけない!」「またこれか…」という反応です。
実はこの手のツイートはギター勢を燃え上がらせて注目を集めるのにうってつけての定番ネタ。
SNS勃興のはるか昔から「エレキ業界のタブー」として形を変えながら生き続けています。

✓ 木材が音に与える影響

例えば木製の打楽器は、用いられている木材でかなり音質が変わっていきます。
同じ様にヴァイオリンや木管楽器、アコースティックギターにおいても木材の違いが音に影響するというのは定説とされていて、疑いを持つ人はいませんでした。
これに反対意見が出始めたのは音のデジタル処理技術が発展した事が大きな一因となっています。

✓ 音は作るものに

【音作り】というワードはエレキ楽器ならではのアイデアです。
古来、楽器の音というのは楽器を制作した職人の技術、それを演奏する演奏者の技術で決定されました。
一方でエレキ楽器というのは前述のデジタル処理が大前提になる。

楽器からケーブルを介してスピーカーからの出力、スピーカーのツマミで高音域や低音域の出力レベルを調整…。
まさに、音は作るもの。

では、動画のようにエレキギターの音は電装系(配線材やポット、ピックアップ他)とアンプ類といった、いわゆる機械が100%決定づける事で間違いないですね!!

しかし人はそのように思いませんでした。

✓ 木材×機械

たとえ機械類に一級品を揃えても、良質な木材で建てつけられた楽器でなければ、良い音は出ない。
このアイデアは納得感が強いような、、ただの理想を語っているような…なんとも言えない感じのニュアンスです。
というのもまず”良質な木材”というのはまったく定義が難しく、”良い音”というのはもっともっと難しい、主観に支配された世界です。
こういった時に人間というのは(必ずといっていいほど)、ある便利な価値基準を据える生き物です。

それは「古くから支持されているものは良い」という考え方です。

✓ ワインやファッションの系譜

世界のほとんどの人がロマネコンティやエルメスの良さを理解しておらず、説明もできません。
「良い素材、良い環境、良い職人が揃っているんじゃない?」くらいの認識で、数百万円以上の葡萄酒を、バッグを手に取ります。
これらがなぜ良いのかちゃんと説明するのは非常に難しいのですが「昔から多くの人に良いと言われているもの」というと(意外と)誰にでも理解できる、『支持されている』というのはこれほどに説得性が高いのです。

さてそろそろ『ギターの音に木材が関係ないことを証明した』話題に戻っていこうと思います。

✓ 今さらその証明は受け入れられない

投稿主さんの試みはとても魅力的な側面があります。
映像も素晴らしい編集がされていて見やすいし、素直に受け止めれば(完全に無いというわけではないけれど)木材と音の関係は薄いのかもしれません。
しかし、もう今さらになってこの結果は受け入れられないのが現実です。
なぜなら『エレキギターであっても木材が音に影響を及ぼしている』という考え方が、昔から多くの人に支持されてきたからです。

エレキギターの良い音論争はほぼ”ヴィンテージサウンド=最高の音”の定説からきているような気もしていて、これにはエレキギターシーンの始祖ともいえる数々のアーティストが影響しています。
実際にこれらの音に近いものを実現しようと各社はしのぎを削ってエフェクターを作っていますし、復刻モデルのギターも度々リリースされています。
古くからあるヴィンテージギターが最高のギターだという考え方もまた、特に根拠『支持されてきた』アイデアです。

一方で”意見”が”実験”になったことが、人々の触覚を大きく刺激したことは間違いないです。
これから音がどんどん解析されていくにつれ、良い音の基準が数値化されればついに謎が解き明かされるのかもしれません。

ただ私の個人の意見では、それでも『支持』の牙城を崩すには時間と歴史が必要だとも思っています…。

▼番外編

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