エレキ楽器演奏者にとって終わらないテーマのひとつ、それは
木材と、音の関係
昔の木材はよかった…、もう見つからない木材がある…、いろいろな伝説的な逸話が飛び交う領域ですが果たして、どれくらい材と音の相関関係があるのでしょうか。
代表的な木材一例
01 アルダー
アルダー=ギター材の王道と言われるほど広く使われる木材です。
比較的やわらかくて加工のしやすいアルダーは、ボディ材としては文句なしのエース。
一方で木目が派手で無く、少し赤みがかっているので塗装はべた塗りになる傾向に。
02 マホガニー
楽器に用いられるマホガニーは主に、オオバ・マホガニー(ホンジュラスマホガニー)ですが、近年はアフリカン・マホガニーが主流です。
木目的にはどちらも同じ様な感じですが、このアフリカンマホは実はマホガニーではない(えっ!)。さらにいうと真の意味でのマホガニーというのはキューバン・マホガニーですが、植樹されたものを除いてもうとっくに絶滅しています。(えぇっ!!)
03 アッシュ
木目が一番際立っている木材の代表格がこのアッシュですが、反面、木目の個体差がものすごい。
またアッシュは材によって重さがかなりバラバラなのも面白く、特に軽い物をライトウエイトアッシュ、とか呼ばれている事がありますが厳密に区分されているわけではありません。
音との関係
音に影響するのは間違いないが…
一般的な観念として、アルダーは中音域に豊かな鳴りをもち、アッシュは高音域に抜けが良く際立って…とよく言われています。
ただ、木材については自然材の関係から年輪の形成、目の詰まり具合に個体差があって、ひとつとして同じものがありません。
その関係から、ひとくちに「アルダー」とか言っても当然音響上の特性も異なってきます。
結論、音に影響が出るのは間違いなさそうですが、すべてのアルダーが中音域に豊かな鳴りをもつ、と言い切れないのが現実です。
代替材の台頭
前述のマホの件のように、硬さが近くて木目が似ていたらマホって事にしちゃえ、みたいな現象があらゆる材で起こっています。
言わずとも、ギターは人類史上もっとも「多く・広く」普及した楽器の一つ。600年の歴史をもつとも言われるヴァイオリンをもはるかに凌駕する製造数で、世界中で毎日作られています。
しかし、先のキューバンマホガニーの例のように木材は天然資源ですから、自生のサイクルを越えて伐採すれば絶滅します。
さすがの人間もこれはいけないということで、出てきたアイデアが代替材です。
初めは木材ありき、今は見た目ありき
ここ数十年で一気に加速化したのが大量生産とコストカット。わざわざ遠い北米産のアッシュを採りに行くよりは、工場のある現地で自生している木で見た目の近いものがあったら積極的に使おう。こうなるのは当然の流れでした。
現在は端材を集積した代替材を人工的に作ったりして、可能な限りロスを減らす動きもあり、環境へ配慮した生産をモットーにしている工場も増えているようです。
木材の確保と保全は楽器業界だけでなく、家具や家屋のメーカーも一丸となって取り組むべき世界の課題となっている。
ハイエンドに使われるのだけが良質材?
良質材かどうかの判断は難しいですが、木目が美しくて経年変化が起こりにくいものが楽器では好まれていて、そういう材は高級なハイエンド機種に使われている事が多いです。
でも実は美しい木目の材が初めから高い強度を誇っているのではなく、強度耐久性は木材の乾燥にかけた手間が大きく影響すると言われています。
「あ、これ木目が綺麗だから手間暇かけて乾燥させて、高級モデルに使おう」
木目が商品としての選定基準で、あとは職人技術への評価、つまり人件費の関係で高価になりハイエンドへ搭載されるという事ですね。
奇跡的に自然と上手く乾燥した木材が搭載されている古くて安いギターも存在し、隠れた名器として、中古市場で取引されることもあります。
分からない、それが魅力
結局「明らかなことはとても少ないんだよねぇ」となるのがこの議論です。
そもそも音の感じ方にも個人差が大きく、演奏者によってもかなり変化する、画一的な実体のない表現母体が「音」です。
その実像はきわめて流動的で、良い音の概念すらずーっと変化し続けています。
分からない、そこに魅力が詰まっている。
ギタリストの探求は大きなロマンがあります。