【ウクレレ小話】Low-Gの秘密と、その危険性

投稿者: | 2022年1月19日

Low G の方がええ感じ…かも

ウクレレをやっていて抱く「High G から Low G に変えた方が良い?!」という疑問。
今回はG弦がローに張り替えるというアイデアが生まれた秘密と、張り替える際の注意点をまとめます。

High or Low G 論争

ウクレレの4弦はG(ソ)の音ですが、多くのウクレレは初期状態でハイGの弦が張られています。
一方でローGというのは、もともとのG弦のオクターブ下の音。

ヴァイオリンやギターに至るまでほとんどの弦楽器は“音の高さ順に弦が張られている”ので、ウクレレの4弦がハイG(全弦のなかで2番目に高い音)になるのはけっこう特殊です。
「それこそがウクレレ独自の涼しい音色を表現しているので、チャリンとしたハイGが最高だ!!」
「いやいや、低音の響きが足りないからローGにしたほうが良いよ、とくにソロウクレレではね」

こんな感じで、4弦をどちらのG弦にするのが良いか論争が始まって、今も終結していません。

G弦の秘密

前述のとおり、ハイGの特色は軽やかな和声、ローGは低音が出てソロウクレレに向いた特長だとされていますが、ここにはちょっとした秘密があります。

人は耳から得た情報を使って、情景や空間分析をするとされています。

例えば「コンッ、コンッ」と短く細かい音が聞こえたら小さい空間に硬い物質をイメージし、
「サーーァァァ…」と長い反響音が聞こえたら広い空間に流動的な物体を意識します。

さて、ハイGではコードをジャン!と鳴らしたときに高い音から耳に入ってくる事で「奥行が近い」ことを強制的に認識させています。
似たものとして (どの音階や音程についても鈴音が付加される特性がある) トイピアノやタンバリンなどがありますが、音響感覚から楽器そのものがある程度小さく、複雑でなく、より身近で親しみやいものだと感じさせることに成功しています。

一方でローGは、楽器のサイズは変わらないはずなのに音感からくる認識で「奥行が深い」空間をイメージしてしまいます。
これにより、ピアノなどの伝統的な楽器にみられた頼もしく、ある程度重く大きく、優雅で本格派な印象を植え付けます。

ソロウクレレではローGが役に立つ!と思っているのは低音にレンジ(音幅)が広がることだけではなく「ウクレレ1本で演奏を成立させるならもう少し頼もしさがあった方が良い」という別の要求を満たすから、かもしれません。

※聴覚の感じ方には絶対性がないので、あくまで参考でm(__)m

さて、印象の議論はトンデモ話じみてくるのでこの辺にして下段ではローGに弦を交換する際に注意したいポイントについて。

Low G へ張り替えるときの注意

ローGは音が低くなる分、ハイGよりも弦が太くなります。
ウクレレ弦は①ブリッジに巻き付け→②サドルから→③ナットを経由して→④ペグポストに通して張りますが、弦の太さが変わっていると思わぬ共振がおき、異音の原因になりがち。

※巻き弦のLowG弦は太さに大きな差が無く、加工が不要な場合もあります
しかし4弦だけを巻き弦にすると、プレーン弦との音響にけっこうな違いが出るので注意

下図のように、ナットとのサイズの問題で異音が出てしまった場合にはナットの溝切を広げる加工が必要になります。

ですから、ひとたびローG用にナット素材を加工してしまうとハイGに戻す際にはいちから作って再度交換しなければなりません。

それでも、ナットの制作はせいぜい数千円~なので「そんなに安いなら気軽に交換してみよう!」と考えるかもしれませんが、実は費用よりも、もっと大きなリスクが潜んでいます。

ナットで激変するウクレレ

ナットやサドルの加工・制作をするとローG弦が張れますと書きましたが、実は音や弾き心地が大きく変わってしまうリスクがあります。

お気に入りのウクレレの音と弾き心地が変わりますが、それでもローG弦に交換しても良いですか?

こう尋ねられれば、ほぼ100%辞めておくでしょう。
ですから良い腕のナット制作者がいなければ、ローGへの挑戦はまさに死地へおもむく大冒険となるのです…。

このように、簡単にコロコロ変えられない事からローG弦を気軽に試せないのが実情。
簡単に手に入らない物をめぐって派閥論争が巻き起こるのは、楽器業界の伝統でもあり、人にとって至極当然の流れなのかもしれません。

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